卵巣と子宮を切除しなくても良い治療方法とは?

卵巣がんの手術を受けても妊娠と出産の願いを叶えられるかもしれない

卵巣や子宮を切除する手術を受けると、「将来赤ちゃんを授かれないのでは……」と心配してしまう女性も多いでしょう。しかし、「妊孕性温存手術」なら卵巣や子宮を温存できるため、将来妊娠できる確率が高くなります。実際に卵巣がんの治療後に妊娠・出産をした女性もいるので、体験談を見てみてください。

卵巣がんの主な手術方法

4つの手術方法について

卵巣がんの切除範囲は、がんの拡がり具合や年齢などによって変わってきます。手術方法は主に4つあります。

卵巣切除術

I期の初期段階で、妊娠を希望している患者さんには、卵巣切除術で片方の卵巣を残すことが多いです。しかし、卵巣がんは発見されたときには転移していることが多いため、片方しかがんを確認していないとしても、両側の卵巣と卵管、子宮を摘出することがほとんどです。

大網切除術

胃から垂れ下がり、お腹の臓器を覆っているのが大網です。脂肪組織でできています。大網は最も卵巣がんの転移が起こりやすいとされているので、摘出手術をする場合はたとえ転移していることが確認がされていないとしても、卵巣や子宮と一緒に大網も切除されます。術後に切除した大網を顕微鏡で検査したときに、転移が見つかればIII期以上の進行がんと診断されます。

後腹膜リンパ節切除術

お腹の中は腹膜と言って薄い膜が張られています。その腹膜と背骨の間には大動脈や下大静脈、腎臓尿管などが通っており、その部分は後腹膜と言われています。後腹膜にはたくさんのリンパ節があり、卵巣がんが転移する可能性が高いです。もしもリンパ節への転移が疑われたときは、後腹膜リンパ節の一部または、ほとんどが切除されてしまいます。転移がリンパ節に見つかれば、ステージIII期以上進行しているということになります。

他臓器合併切除術

大腸や小腸などの腹腔内臓器に卵巣がんからの転移や浸潤が見つかったり、肝臓への転移が見られた場合は卵巣だけでなく、これらの臓器も一緒に切除する可能性があります。それは、卵巣がんの範囲は狭い方が、予後が良好だからです。

出産・妊娠を望んでいる場合は「妊孕性温存手術」も選択できる

妊孕性(にんようせい)温存手術とは

転移や再発のリスクが高い卵巣がんは、できる限り腫瘍を取り除くことが、手術の1番の目的とされています。そのため、がんが片方の卵巣にしか発生していないとしても、両方の卵巣や転移が多い子宮、大網まで切除するのが基本です。

しかし、妊娠や出産を望んでいる女性の場合は、「妊孕性温存手術」が受けられるかもしれません。この手術ではがんが発生している卵巣だけを切除して、がんが発生していないもう片方の卵巣や卵管、子宮を残すことができます。若い女性に多い胚細胞腫瘍の場合は、とくに妊孕性温存手術が推奨されています。

ですが、卵巣がんの多くを占めている上皮性卵巣がんの場合は、ステージIだとしても安全を優先して、左右の卵巣や子宮を摘出する方向で考えられています。それでも、どうしても妊娠と出産を希望する場合は、がんが片方の卵巣にとどまっていて浸潤していなければ、妊孕性温存手術を受けることが可能です。そのときはリンパ節が腫れていないか、腹部に腹水が溜まっている場合は腹水にがん細胞が含まれていないかなどの精密検査を行ないます。

妊孕性温存手術を受けるには“条件”がある

妊孕性温存手術が受けられるかどうかは、条件によって決まります。

まず、前述通り胚細胞腫瘍は、妊孕性温存手術を受けられる可能性が高いです。また、これ以外にもこの手術を受けられる条件があるため把握しておきましょう。

①IA期で高分化型腺がんあるいは、境界性悪性腫瘍(明細胞腺がん以外)

高分化型腺がんは、正常な細胞を残したまま細胞分裂をしており、増殖スピードが比較的遅いがんのことを言います。簡単に言えばおとなしいがんです。もう一方の境界性悪性腫瘍は、良性と悪性の中間的な腫瘍です。どちらかと言うと悪性度が低いがんです。

②外来受診が可能

妊孕性温存手術後は、経過観察を行なわなければなりません。そのためにも、定期的に医療機関を受診する必要があります。外来受診をすることで自身の体調を把握できますし、卵巣がんの再発や転移をいち早く発見できます。

病理検査後にもう片方を摘出する場合もある

白衣の男女

妊孕性温存手術を受けたあとの病理検査で摘出した卵巣がんの悪性度が高いと分かれば、温存されている卵巣も切除しなければいけないことがあります。それは悪性度が高いと他臓器への浸潤や転移で、命に関わることがあるかもしれないからです。

しかし、まれに、卵巣を温存したまま抗がん剤治療を行なう場合もあります。

手術後に妊娠できた女性の喜びの声

卵巣がんの治療を乗り越えて出産をしている女性は数多くいます。そんな女性たちの体験談をご紹介します。

赤ちゃんとお母さん

21歳のときに卵巣がんを患い、片方の卵巣と大網を切除する外科手術を受けました。その後、27歳のときに無事赤ちゃんを産むことができました。しかし実は、卵巣嚢腫と聞いていて、出産するまで卵巣がんということを知らなかったんです。もしかすると両方の卵巣と子宮を切除する可能性があるということも言われました。しかし、初期で片方の卵巣には異常がなかったので、無事に卵巣と子宮を残すことができました。

二度とがんを発症しないように、今ではちゃんと定期検査を受けるようにしています。

赤ちゃんを抱っこする人

20代半ばのときに悪性腫瘍の胚細胞腫瘍を患いました。がんの大きさは赤ちゃんの頭大くらいあり、骨盤にはまっていました。手術前に癒着(皮膚や膜が炎症でくっついている状態)していると言われて大きなショックを受けたのですが、実際に開腹すると癒着していませんでした。そのため、片方の卵巣と子宮を残して副作用を乗り越えながら、抗がん剤治療を受けることができたんです。

その後結婚をし、治療をしてから10年経った現在は2児の母として頑張っています。