卵巣がんの治療を受ける前に知っておくべき知識

日本では年間9,000人もの女性が卵巣がんを患っています。死亡者も4,500人を超え、死亡率が高い病気です。また、卵巣がんは早期発見が難しいと言われています。卵巣は妊娠や出産をするため女性にとって非常に大切な臓器ですから、初期段階で発見できるように心得ておきましょう。

女性器の働きとは?

排卵は卵巣から分泌される「女性ホルモン」によって起こる

卵巣からはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されています。これらの女性ホルモンは排卵を起こしたり、妊娠を持続させたりするのに欠かせません。

また、卵巣では、卵子を育てる働きもしています。女性の卵巣には生まれたときから卵子のもととなる「原始卵胞」が200万個程あり、月経(生理)が開始すると左右どちらかの卵巣で1個ずつ成熟していきます。そして月に1度卵子を放出するのですが、これが排卵です。排卵は、厚くなった子宮内膜を子宮外に捨てる役割をしています。

卵巣・卵管・子宮が働くことで「妊娠」できる

女性の子宮イラスト

卵巣から放出された卵子は、腹腔内を漂っています。この卵子をキャッチするのが卵管です。卵管の先端は卵管采と言って、イソギンチャクの形をしています。その卵管采に卵子が吸い込まれていき、卵管の中に入ります。卵管の中には繊毛(せんもう)と言って卵子の移動を手伝う細い毛があり、それが卵子を卵管膨大部に運びそこで精子と出会って受精をするのです。そして卵子が受精卵になると、繊毛運動で3日~4日かけて子宮へ移動します。子宮には受精卵のクッションとなる子宮内膜があり、そこに着床できると正常な妊娠が成立します。

もしも卵管が詰まっていると受精卵が子宮にたどり着けないため、卵管内に着床してしまいます。そこで受精卵が育つと卵管が破裂してしまい、「子宮外妊娠」を引き起こすのです。このような事態を避けるためにも卵巣に異常を感じた場合は、些細なことでも良いので、医師に診察してもらいましょう。

悪性腫瘍の卵巣がんはいち早く気づくことが大切

卵巣がんは様々な部分から発生する

表層上皮と呼ばれる卵巣の表面を覆っている上皮や卵胞、あるいは黄体、そして卵子から卵巣はできており、卵巣がんはこれらすべての部分から発生します。卵巣そのものだけでなく、卵胞や卵子にまでがんができてしまうのです。

これらの部分から発生するがんの割合は、

①表層上皮から発生する表層上皮性、間質性腫瘍が「60~70%」

②卵胞あるいは黄体から発生する性索間質性腫瘍が「5~10%」

③卵子から発生する胚細胞腫瘍が「15~20%」

となっています。この中で表層上皮性、間質性腫瘍は閉経前後の40~60歳代女性、胚細胞腫瘍は10~30代の比較的若い女性に多く見られると言われています。

また他には、境界悪性腫瘍と言って良性と悪性の中間の腫瘍もあります。この境界悪性腫瘍は良性に近いですが、悪性腫瘍と同様の経過を示す場合もあるため要注意です。

卵巣がんの初期症状~自分に当てはまらない?セルフチェック~

①腹部の張りや膨満感

②食欲不振や悪心

③頻尿や便秘

④腹痛や腰痛

⑤閉経後の不正出血

これらは卵巣がん特有の初期症状です。

卵巣がんが進行すると腫瘍が大きくなり、骨盤内にある臓器を圧迫して膨満感や頻尿、腰痛などの症状が現れます。また、下腹部を触ったときにしこり、腹水が溜まると腹部の膨らみなどに気づくこともあります。

卵胞や黄体から発生する性索間質性腫瘍の場合は、ホルモンが異常分泌されるので、月経サイクルが狂ったり閉経後に出血したりといった症状が現れます。

子宮は膣とつながっているため、何らかの異常があれば症状に気づくことができますが、卵巣は骨盤の奥に収まっていることが関係して、これらのサインに気づけないことがほとんどです。ですから、定期的にがん検診を受けて、卵巣の状態をチェックすることが大切です。

悩んでいる女性

他の部分から転移することが多い

女性ホルモンの周期により、血液やリンパの循環が活発になる性成熟期になると、他臓器から卵巣にがんが転移しやすいと言われています。ほとんどが胃がんや大腸がんなどの転移ですが、乳がんや子宮がんからの転移もあります。

卵巣にがんが転移すると急速に大きくなるので、原発巣よりも発見が早くなり、先に卵巣がんが摘出されます。そして摘出後に転移であったことが分かるのです。

看護師

若い女性は「卵巣胚細胞腫瘍」の発生が多い

10~30代女性の卵巣がん患者の約70%の腫瘍が、卵巣胚細胞腫瘍です。卵巣で卵子になる生殖細胞が腫瘍化することで発生します。

早期発見が難しい卵巣がんですが、この卵巣胚細胞腫瘍は比較的早い段階で発見されることが多いです。手術や抗がん剤治療などを用いれば、治癒する確率も高くなります。

卵巣がんの主な治療方法

治療は「手術」と「抗がん剤」が中心になる

I期やII期の卵巣がん治療は、主に手術で腫瘍の摘出を目指します。摘出後に再発リスクが高いと診断された場合は、再発予防として抗がん剤治療が行なわれます。III期やIV期の場合は、手術と抗がん剤治療を併用して治療を進めます。通常だと術後に抗がん剤治療を行ないますが、場合によっては抗がん剤治療でがんを縮小させたあとに手術で摘出し、術後に再び抗がん剤治療を開始することもあります。

副作用が起こる理由

「抗がん剤治療=副作用」というイメージを抱いている女性はきっと多いはずです。しかし、なぜ副作用が起こるのか分からない方も多数いるでしょう。

抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞も攻撃してしまいます。数々の細胞がある中でもとくに血液や髪の毛を作る細胞、消化器粘膜の細胞などは増殖が激しいということで、抗がん剤から攻撃されやすいです。各細胞が攻撃を受けると貧血や脱毛、下痢などの副作用が起こります。

しかし、抗がん剤の種類や患者さんによって副作用の症状は違います。そのため医師に相談して抗がん剤の副作用を緩和してくれる薬剤を組み合わせたり、副作用の程度を見ながら抗がん剤の種類や量を調節したりして、自分に最適な抗がん剤治療を行なうことが大事です。